YUI'S VOICE (2)

ーー留学先のドイツから帰国したあとの活動について教えてください。

荒井 15歳で日本を飛び出してから26歳になる年に日本に帰国することになりました。やはりまず考えたのは、日本でどのように音楽家として活動していくか、です。ドイツの師匠ヴォルフガング・メールホルン先生にも「これから生活する場所はこれからの君の音楽に滲み出てくると思うから」と意味深なことを言われていました。

師匠が暮らしていた場所はそれはそれはもう、北ドイツの郊外、なんならもうすぐデンマークという田舎で。留学生活の最後のほうは先生の自宅でのレッスンだったので、ハンブルグから2泊3日で先生のご自宅に泊まり込みでレッスンしていただいていました。

それがまたチェロのレッスンはもちろんするのですが、その2泊3日のうちレッスンは3時間くらいだったり(笑)。あとは先生の庭の手入れを手伝ったり、愛犬の散歩、先生の趣味のヨットの手入れ、夏は海に出てなぜかアイスクリーム食べにヨットでデンマークまで行ったり、「そろそろ夕日が沈むぞ!行くぞ!」と言われてゴムボートに乗り、わりと海の真ん中まで行って夕日を見たり(ゴムボートのときは内心、どっか海の果てに流されないか心配でした 笑)。とにかく大自然に囲まれた生活をしている方でした。

師匠からは季節の変わり目や、空気の匂い、空の色、鳥の声、あとは風の吹き方など、言い尽くせないほどの自然からのメッセージを一つ逃さずキャッチする大切さを学びました。レッスン中にもよく言われていましたが、「いちばんの先生は僕ではない、この世界にある自然がいちばんの先生なんだよ」と言うくらい自然大好き人間なんです。そんな先生との時間もたくさんあったからか、日本で生活するなら自然の多いところがいいなぁと思い、福井に住もうと決めました。


ーー東京を拠点にすることは考えなかったのですか?

荒井 もちろんやはり東京という場所がきっといちばん情報が多くて刺激もたくさんあっていいのかな?とも思ったのですが、15歳で離れた福井のことは自分の頭の中でも15歳で止まっていたので、少しずつでもいいから地元福井で演奏活動だったり社会活動だったりできれば福井にも弦楽器の魅力が広まって行くのかな、と思いました。

福井の環境に関してのいちばんは自然が多いこと、そして海の幸などの魅力ある豊かな食材です。美味しい音を追求するには、美味しいもの食べないと(笑)。車を30分走らせれば海も山も行ける贅沢な環境だと思います。


ーー福井ではどのような活動をされてきたのですか?

荒井 帰国して8年になりますが、福井県立音楽堂での演奏会や、福井にいる演奏家たちとの演奏会を企画したり、誘っていただいたり、その他は福井県内の小中学校、高校の弦楽クラブや部活動の指導をしてきました。

自分が幼少期に福井にいた頃にはなかった、福井の子どもたちが弦楽器に出会える場所が公立の小中学校にあるという環境にしてくれたことも、自分が帰国してから福井県が取り組みを始めてくださったことで、本当に感謝感激しています。

弦楽器はどうしても簡単に始められる楽器という印象ではないので、昔は福井ではなかなか身近に感じられなかったときもあったかと思います。

大人になったいま、福井にいるたくさんの子どもたちと弦楽器、音楽を通して出会えてることは福井出身の音楽家にとっては本当に幸せです(最初に教えた当時小学4年生だった生徒は、もう高校3年生になろうとしています)。そして音楽によって子どもたちの心に幸せの芽ができてるといいなぁ、なんて思ってます(笑)。


ーー福井の子どもたちがうらやましいですね。と同時に荒井さんの福井愛を感じます。

荒井 福井で過ごし始めてからいろいろな演奏会に出演させていただいたり、企画したりしてきましたが、やはり自分にとってここ最近でいちばん大きかったのは、日本に帰国した後もずっといろいろな場面で誘ってくれた東京チェロアンサンブルのメンバーたちが福井に来てくれたことです。2018年2月に実現しました。福井では38年ぶりの豪雪が来てしまい、みんなこれるのか!?と不安でしたが(笑)。

その東京チェロアンサンブル10周年の福井公演が実現したのも、たくさんの方々の支えと応援があって実現したことですし、福井の皆さまに自分以外の素敵なチェリストたちを聴いていただけることも嬉しかったです。まさか福井でチェロのみのコンサートがチケット完売、そして追加公演ができるとは思ってもいませんでしたし、いつも福井から東京へ出向いていた東京チェロアンサンブルが全員で福井に来てくれたことは帰国してからの夢の1つでもあったので、それは夢のようでした。

これからも自分がどこに住んでいようが地元福井ではいろいろな演奏会を企画していきたいですし、自分が福井の外で出会った演奏家たちを福井のお客様にも聴いていただきたいと思っています。

ということもあり、常にフットワークは軽く!、幅広くいろいろなところで素敵な音楽家たちに出会いたいですね。

福井のご自宅で、愛犬メギーとくつろぐ。


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Yui Arai Tokyo cello recital

荒井 結チェロ・リサイタル実行委員会のオフィシャルサイトです。

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