YUI'S VOICE (15) 〜ソロリサイタルを前に

ーー10月3日の東京公演、10月9日と10日の福井公演、といよいよソロリサイタルが迫ってきましたね。

荒井 去年の5月、初めて東京でリサイタルをさせていただいてから早1年半くらいになります。今年も東京でリサイタルをさせていただけること、本当に感謝でしかありません。

そしてまさか、新型コロナウイルスによって世の中がこんなふうになるなんて、そして自分自身も自分の人生の送り方、一度しかない人生においてどんな自分を確立させ、どんな人生を送っていきたいのか、何をするべきか、自分がこの世のなんなのか・・・公演が相次いでなくなってしまった期間中には結構いろいろなことを考える時間がありました。

・・・ありましたって過去形になっていますが、今も自分自身について考える瞬間がたくさんあります。そんななか、たくさんのことを考えて過ごしていましたが、気がついたらリサイタルも今週土曜日、目の前になってしまいました!! ほんっとに早い・・・!


ーー今回は、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番、ベートーヴェンとラフマニノフのチェロソナタ、というプログラムに挑戦されますが、それぞれの曲に対する思い入れや意気込みをお願いします。

荒井 バッハはやはりドイツに留学していた頃に足を運んだ教会の雰囲気を思い出しながら演奏したいと思います。ヨーロッパにある教会の雰囲気はなかなか日本ではない空気感があります。いろいろな悩みや環境を抱えた人たちが足を運ぶ教会は、外の賑やかな街の音も忘れさせるような独特な静けさがを感じることができます。その無音の空間に座るだけで、心の声を聞いてくれるような気持ちになります。

留学していたハンブルグには、実際バッハが弾いていた教会が今も残っています。そこでパイプオルガンを弾いていたと想像するだけで、足を踏み入れた時に鳥肌が立ったのを今でもよく覚えています。


ーーそしてアニヴァーサリーイヤーのベートーヴェンのチェロ ソナタ第5番。

荒井 今年はベートーヴェン生誕250周年ということで、世界中でベートーヴェンを祝っていましたね。しかし新型コロナウイルスの感染が拡大してからたくさんの演奏会がなくなってしまったので、これはさすがにベートーヴェンも天国で肩を落としてるのでは・・・?と思います。

ベートーヴェンのチェロソナタは学生時代に3番、4番を主に勉強したことを覚えています。ここ数年、弦楽四重奏でベートーヴェンを取り組む機会があったので、昔よりも今のほうがベートーヴェンの魅力に心奪われることが多いです。今回は5番、ベートーヴェンにとってチェロソナタ最後の作品なのでなかなか難しい面もたくさんありますが、しっかり取り組んで自分の解釈の中でベートーヴェンにお祝いの気持ちを込めて演奏したいと思います。


ーー最後はラフマニノフのチェロソナタですね。

荒井 この作品はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の直後に作曲された作品です。ピアノ協奏曲第2番といえば、日本で一時期とても有名になったドラマ「のだめカンタービレ」で千秋様がソリストとして演奏した作品ですね。ラフマニノフは身長が2メートル近くあり、手を非常に大きくて12度(ドから1オクターブ上のソまで)が届いたそうです。それもあってか、テクニック的にも本当に難曲だと言われています。

去年に引き続き素晴らしいサポートをしてくださるピアニストの鈴木慎崇さん曰く、「ピアノ協奏曲よりこっちの方が難しいとおもう・・・」だそうです(笑)。

ラフマニノフは精神的に病んだ時期があり、それをなんとか克服した後の作品だからか、この作品からはいろいろな葛藤や挫折、そして希望、復活、色んな感情が入り混じっています。

不思議なことに、このリサイタルが決まったのはコロナ感染拡大する前ですが、コロナ禍になって、先が見えない不安やいろいろな葛藤があったこの半年間の思いをこの作品たちにぶつけられるような、また作品に勇気づけられるようなプログラムになってるのではないかと思います。実際、自分も練習を重ねていて作品に元気付けられているような気持ちになります。


ーー今回のソロリサイタルへの意気込みをお願いします。

荒井 今年は客席の席も半分での開催となりますが、その場に来てくださり自分の音楽を共有していただけることに感謝して、今できる自分の音楽を精一杯表現したいと思います。

音楽が自分の心にとっても非常に大切な栄養になるということと、一人でも多くの方に一瞬でも自分の音楽の力がお届けできるよう、感謝の気持ちを忘れずに演奏します。


ーーお忙しいなか、ありがとうございました。本番当日を楽しみにしております!

よったかさんとあわせ練習中!

Yui Arai Tokyo cello recital

荒井 結チェロ・リサイタル実行委員会のオフィシャルサイトです。

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